【要約】
公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会が創設したコスモス国際賞に、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学のデービッド・アンドリュー・キース教授が受賞しました。
【第32回コスモス国際賞 授賞理由】
コスモス国際賞委員会委員長の山極氏から、今回のコスモス国際賞の授賞理由が述べられました。
デービッド・アンドリュー・キース博士は、オーストラリアを対象にした植生学・生態学的研究、生態系のレッドリストの評価に関する地球的視野からの研究、環境保全のために世界の生態系を類型化する研究に大きく貢献した研究者である。
博士は、研究キャリアの初期から、地元オーストラリアの植物相や植生の研究に取り組んだ。その集大成であるニューサウスウェールズ州の植生全体をまとめた著書『海岸から砂漠まで : ニューサウスウェールズとオーストラリア首都特別地域の在来植生』は、専門家のみならず一般でも広く活用されている。また、博士は、火が自然生態系にもたらす影響 (ファイヤーエコロジー) に関する研究として、植物が自然火災にどの程度依存しているかを機能形態から予測し、オーストラリア特有の生態系の維持に定期的な自然火災が重要な役割を果たしていることを明らかにした。これは、世界各地の森林火災発生地域における野生植物と火の関係性を鑑みる上で、普遍的で重要な研究といえる。
さらに博士は、気候変動のもとでの生物種の絶滅危険性の予測に関する研究をはじめ、絶滅危険性の検出および評価に関する研究も数多く行っており、保全生物学の分野でも顕著な業績を上げている。特に、これまで基準がなかった生態系自身の消失危険性の評価に関して、新しい手法である「国際自然保護連合(IUCN) 生態系レッドリスト (Red List of Ecosystems)」を確立する国際共同研究を主導し、この仕組みの全世界的な普及を精力的に行っている点は特筆に値する。
地球上に存在する多様な生態系を的確に保全するためには、その対象を明確にすることができる、全世界で適用可能な生態系の類型化が必要である。博士は、保全対象となる生態系の類型化に関する研究も行い、生態系機能に注目して、自然・人工を問わず全世界の陸上 (地上、地下) ・水圏 (陸水、海洋) 生態系の全てを分類する国際共同研究を主導した。この研究によって IUCNグローバル生態系類型化体系第 2 版(IUCN Global Ecosystem Typology 2.0) が完成し、これによって生態系の消失危険性の評価を行えるようになった実績は画期的なものである。
以上のようにキース博士の研究は、地元オーストラリアでの植物生態学的研究をベースに、世界的な視野での生態系の消失危険性の評価に関する研究へ、そして世界の生態系の分類研究へと展開してきた。生態系は、地球上の多様な生命の相互作用の総体である。人類活動によって生物多様性の減少が急速に進行する現在、上位階層として生物多様性の不可欠な構成要素である生態系の保全は火急を要する。キース博士によるマクロな生態系の評価方法の確立と、その保全に関する研究は、包括的・統合的な視点及び普遍性を重視するコスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
【最後に】
コスモス国際賞は、国際花と緑の博覧会が掲げた「自然と人間との共生」の理念を継承する形で創設されました。宗澤政宏氏は、コスモス国際賞をはじめ、公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会の活動に深く関わっています。
宗澤政宏氏はホテル経営のみならず、持続可能な地域社会の実現や、長期的な視点からの地球環境の保全を強く掲げています。宗澤政宏氏の社会貢献活動への関心の高さや、活動の積極性には、頭が下がる思いです。宗澤政宏氏の志や思いと、国際花と緑の博覧会記念協会が掲げる、「自然と人間との共生」という崇高な理想が多くの人々に届くことを祈るばかりです。