【要約】
この記事では、宗澤政宏氏が運営に携わっている日本写真映像専門学校の卒業生の活躍をご紹介しています。
【はじめに】
宗澤政宏氏が運営に携わっている日本写真映像専門学校は、長年にわたって写真界に数多くの優秀な人材を輩出してきたことで知られています。
今回も、過去の記事に引き続いて、そんな日本写真映像専門学校の卒業生のなかからピックアップして、その方の活躍をご紹介していきます。今回ご紹介するのは、奥彩花さんです。
【日本写真映像専門学校の教師に紹介された作品が、自身の作風に影響を与えた】
子どもの頃はバイオリンに関連する仕事を志し、その後水中写真のカメラマンの道を希望した奥さんですが、現在の作風は「死後の世界」を想起させるものなどノスタルジックな方向へと進んでいます。
しかし、作風を変えることになった大きなきっかけがあった訳ではないといいます。ひとつ契機があったとすれば、それは日本写真映像専門学校時代に、写真家の津田直さんが教師として来校した際に、山本昌男さんを紹介されたことがきっかけではないかと振り返ります。それまでも、植田正治さんの作品などを見てはいたものの、自分が作品を作るうえで何かを意識するようになったのは、山本さんの存在が大きいそうです。
【子どもの頃に見た世界を具象化した作品「かつて見た世界」】
奥さんの作品に「かつて見た世界」があります。この作品は、「空間は記憶に刻まれる」というコンセプトで作られたもので、「空を泳げたらいいなぁ」といった子どもの頃にしか見えなかった世界を具象化することが意識されています。
作品のイメージ自体は長い間頭の中にあったそうですが、形にはしてきませんでした。ちょうどそんなときに、日本写真映像専門学校の卒業制作を考えており、そちらには琵琶湖の写真を提出することになるのですが、その直前にグループ展の誘いを受け、新たな作品を考えなければならなくなり、そこで長年あたためてきた「かつて見た世界」を形にしようという運びになりました。いざ作品を発表すると、本人が驚くほど反応が良かったといいます。「これは写真ではない」と批判的な意見を言われるのでは…と考えていたこともあり、予想外の好印象だったそうです。
【人の死とその向こう側を描いた作品「21g」】
その次に制作したシリーズが「21g」です。「人間は死んだら21g軽くなる。それが魂の重さである」という実験結果が発表され、話題になったことがきっかけで制作されました。この実験結果が正しいか否かは別として、現在、世界中で1日約15万人以上が亡くなっており、誰にとっても「死」は身近な存在です。奥さんは天国のような存在を信じているそうで、「向こう側」の風景を見てみたいという思いから制作されました。奥さんは子どもの頃からひとりでいることが好きで、ひとりでこのようなことを考えていたそうです。また、奥さんのお父様も生と死や、向こう側の世界といった話題を躊躇いなくする方だったそうで、その影響も受けているのではと話します。普通に考えれば、家族同士で「死」の話をすることは稀だと思いますが、奥さんの家庭では日常的な光景でした。身近な人が亡くなると不思議なことが起こる、なんて噂がありますが、奥さんのお父様は、「自分が死んだら家に電話をかけるからね」と冗談交じりで言うそうです。
【さいごに】
死をテーマに取り扱うなどノスタルジックな作風が魅力の奥さんですが、その作風に至ったのは日本写真映像専門学校時代のことでした。日本写真映像専門学校と宗澤政宏氏はこれからも、充実した授業や素晴らしい教師の方々の指導を通して、個性的な写真家を輩出し続けることでしょう。