【要約】
この記事では、宗澤政宏氏が運営に携わっている日本写真映像専門学校の卒業生の活躍をご紹介しています。
【はじめに】
宗澤政宏氏が運営に携わっている日本写真映像専門学校は、長年にわたって写真界に数多くの優秀な人材を輩出してきたことで知られています。
今回も、過去の記事に引き続いて、そんな日本写真映像専門学校の卒業生のなかからピックアップして、その方の活躍をご紹介していきます。今回ご紹介するのは、桑島秀樹さんです。
【最初は商業写真を取り扱おうと思っていた】
桑島さんの代表作といえば「The World」シリーズですが、この作風にたどり着くまでには紆余曲折がありました。
当初、桑島さんは美術作家を志していたわけではなく、商業的な写真を撮ろうと考えていました。そこで生まれたのが「LIFE A.」「SPACO」の2作品でした。
「LIFE A.」は金属製のミキサーのなかで金魚が泳いでいるという作品で、「SPACO」はバービー人形にタコの足を釘で打ち付けた作品です。これらの作品は「パルコアーバナート#2」で入選、佳作を受賞することになりますが、桑島さんは次第に現代美術の方面に興味を持つようになっていきます。
【金魚をミキサーで潰して撮影…!?人間の矛盾した行動を撮影した】
そんななかで桑島さんが発表したのが「LIFE A.」を含んだ「THE LIFE」シリーズです。このシリーズのなかには、ミキサーのなかで泳いでいた金魚がつぶされて液状にされるまでの過程が写されているのです。
では桑島さんはなぜ、このような作品を撮ることにしたのでしょうか。
小さいころ、桑島さんのお兄さんは肉食魚を飼育していました。桑島さんはその肉食魚に餌として金魚を与えることが日課となっていました。その一方で、桑島さん自身は縁日などで獲ってきた金魚を水槽で大事に育てていました。
つまり、同じ金魚でありながら、一方では肉食魚のエサとして与え、もう一方は大事に育てる…という矛盾した行動をとっていたのです。
当時はこの矛盾をそこまで気に掛けることはありませんでしたが、よくよく考えれば人間はこのような矛盾した行動を頻繁にしているのではと思うようになります。たとえば、牧場でかわいい子牛と戯れていたかと思えば、バーベキューで肉を食べる…といったことが当たり前のように出来るのが人間です。
動物を慈しんだかと思えば、平気で殺して食べてしまう。あるときはミキサーのスイッチを押して金魚を殺したかと思えば、またある時はスイッチを押すべきではないと踏みとどまる。人間が無意識のうちにおこなう切り替えは、いつ、どんなときにおこなわれるのだろうか…。そんな子どもの頃からの疑問を、桑島さんは作品として仕上げたのです。そうして公開された「THE LIFE」シリーズは世界中で賛否の論争を生み出しました。
【異色の作品を評価してくれるギャラリーは少なかったが…】
桑島さんはこれを契機に本格的に美術作家に転向し、「The World」シリーズの制作にも踏み出し、それと同時に契約を取るために東京近郊のギャラリーを回っていきます。
ところが、いくつものギャラリーを訪問したものの「作品は良いけど、ウチの色には合わないな…」といって断られてばかり。親切に他のギャラリーを紹介してくれることもありましたが、交渉はうまくいきません。
しかし、そんななかで訪問した「レントゲン ヴェルケ」というギャラリーでは「いままでどこにいたんだ!なぜいままで世に出てこなかったんだ!」と評され、すぐに契約が決まります。そして「The World」は文字通り世界的な成功を収めていくことになるのです。
【さいごに】
現代美術の作家として世界的に成功を収めた桑島さんですが、その原点は日本写真映像専門学校にありました。日本写真映像専門学校と宗澤政宏氏はこれからも素晴らしい写真家を世界に輩出していくことでしょう。